〜Midnight Eden Sequel〜【Blue Hour】
陽葵《ヒマリ》に使用される漢字、〈葵《あおい》〉は人名用漢字であり、小学校では習わない。
名前には小学六年までに学校で習う漢字を使った方が良いのか、読みやすさを重視か書きやすさを重視か、南田はさらに深く悩み始めてしまった。
『もう少し絞って、後は産まれた子どもの顔見て決めれば? 俺の名前はそうやって決まったらしい』
『確かにお前は大河《たいが》って顔してるよ』
『どんな顔だ』
我が子の名付けに思い悩む相棒と共に、日没の迫る街を抜けて警視庁への岐路を辿る。助手席では南田がまだ名付けに試行錯誤しているが、ハンドルを握る九条は事件のことを考えていた。
堀川綾菜のアリバイは証明された。梅田の百貨店でグループ展を開いていた綾菜は、個展期間中は大阪市内に住む友人画家、石野知紗《いしの ちさ》の家に宿泊していたと聴取で述べた。
九条と南田はギャラリーバーで綾菜や宮越晃成と対面した翌日に大阪まで出向き、石野知紗に綾菜のアリバイの裏付け確認を行った。
知紗の話では、綾菜が大阪にいた期間は8日の昼から11日の午前中まで。
10日の夜はグループ展参加の画家達と梅田の飲食店で打ち上げを行った。当然、打ち上げには綾菜も出席しており、知紗や他の参加画家のインスタグラムやツイッターにはその時撮られた写真が投稿されていた。
予《あらかじ》め10日以前に、大阪の飲食店で食事をした写真を10日と偽ってSNSに載せることはできるが、グループ展の参加画家人数は綾菜を入れて八人、打ち上げの写真を個人のSNSに載せていたのは五人。
グループ展の参加者全員を巻き込んだアリバイ工作には無理がある。
堀川綾菜が10月10日の夜に大阪にいた事実は覆《くつがえ》せない。知紗にも確認したが、二階堂は10月9日の昼頃に個展会場を訪れていた。綾菜の証言と同じだ。
両者が大阪に滞在中、綾菜が二階堂を殺せる時間的余裕も、殺せる場所もなかっただろう。二階堂からストーカー被害を受けていて殺害の動機がある綾菜には、鉄壁のアリバイが存在する。
名前には小学六年までに学校で習う漢字を使った方が良いのか、読みやすさを重視か書きやすさを重視か、南田はさらに深く悩み始めてしまった。
『もう少し絞って、後は産まれた子どもの顔見て決めれば? 俺の名前はそうやって決まったらしい』
『確かにお前は大河《たいが》って顔してるよ』
『どんな顔だ』
我が子の名付けに思い悩む相棒と共に、日没の迫る街を抜けて警視庁への岐路を辿る。助手席では南田がまだ名付けに試行錯誤しているが、ハンドルを握る九条は事件のことを考えていた。
堀川綾菜のアリバイは証明された。梅田の百貨店でグループ展を開いていた綾菜は、個展期間中は大阪市内に住む友人画家、石野知紗《いしの ちさ》の家に宿泊していたと聴取で述べた。
九条と南田はギャラリーバーで綾菜や宮越晃成と対面した翌日に大阪まで出向き、石野知紗に綾菜のアリバイの裏付け確認を行った。
知紗の話では、綾菜が大阪にいた期間は8日の昼から11日の午前中まで。
10日の夜はグループ展参加の画家達と梅田の飲食店で打ち上げを行った。当然、打ち上げには綾菜も出席しており、知紗や他の参加画家のインスタグラムやツイッターにはその時撮られた写真が投稿されていた。
予《あらかじ》め10日以前に、大阪の飲食店で食事をした写真を10日と偽ってSNSに載せることはできるが、グループ展の参加画家人数は綾菜を入れて八人、打ち上げの写真を個人のSNSに載せていたのは五人。
グループ展の参加者全員を巻き込んだアリバイ工作には無理がある。
堀川綾菜が10月10日の夜に大阪にいた事実は覆《くつがえ》せない。知紗にも確認したが、二階堂は10月9日の昼頃に個展会場を訪れていた。綾菜の証言と同じだ。
両者が大阪に滞在中、綾菜が二階堂を殺せる時間的余裕も、殺せる場所もなかっただろう。二階堂からストーカー被害を受けていて殺害の動機がある綾菜には、鉄壁のアリバイが存在する。