〜Midnight Eden Sequel〜【Blue Hour】
 二階堂の死体が東京ではなく大阪で見つかっていれば、綾菜を重要参考人として任意同行を要請できたのだが、それではまるで自分の犯行だと言っているようなもの。
綾菜はそんな馬鹿な人間ではないだろう。むしろ彼女はかなり頭の“切れる”側の人間だ。

 美大院生でギャラリーバー従業員の日森丈流は9日のアリバイはないが、10日のアリバイは彼の友人に裏付けが取れている。

 画廊スタッフの山野は9日は画廊で作業後は自宅に直帰、10日は日曜日ということもあり妻と子どもを伴ってテーマパークに出掛けている。

テーマパークのチケットの購入日時、園内の撮影サービスを利用して家族で撮影した日付入りの記念撮影がアリバイの証明となってくれた。

 絵画の巨匠、宮越晃成だけがアリバイがないものの、容疑者とするには動機の点でやや弱い。
宮越本人ならばいざ知らず、弟子が迷惑行為を受けていただけでは、死体をバラバラにするまで二階堂への殺意があったとは考えにくい。

 二階堂は自身が経営するコンサルタント会社の関係でも何かと恨みを買っていた。

捜査本部は二階堂殺害を堀川綾菜へのストーカー行為からの痴情のもつれではなく、仕事関係の揉め事か裏社会の人間への依頼の線へ捜査の方向性を変えている。

 九条は3年前に復讐代行ビジネスによる連続殺人事件の捜査に関わっている。(※)
赤トンボの折り紙の存在がある以上、20年前の連続殺人犯、ドラゴンフライが同類のビジネスに手を染めた可能性も捨て切れない。

そうなればアリバイがある者もない者も関係なく、二階堂殺害の動機を持つ人間全員に等しく殺人教唆《きょうさ》の疑いをかける必要があるが……。
(※Midnight Edenシリーズ本編)

 動機、容疑者、死体をバラバラにした理由、死体の切断場所と凶器、血染めの赤トンボと殺人鬼ドラゴンフライ……。

死体発見から間もなく一週間が経つ現在も、この不可解なバラバラ殺人事件の真相を何一つ、解明できていなかった。
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