ハイスペ上司の好きなひと
もう一度布団を被りたい気持ちをグッと抑え、バタートースト片手にメイクを施して目の下の隈を隠し、仕事用の服に着替えて家を出た。
通勤時の電車で眠れれば良いのだが、満員電車ではそれも叶わない。
今日も今日とて出勤したそばから疲れ切って部署に繋がるドアを開けば、その向こう側にいた人物とあわやぶつかりそうになってしまった。
「おっ」
「うわあ!ごご、ごめんなさい!」
思わず大声を上げてしまい後ろに飛び退いた。
まだあまり人が出てきていない時間だから良かったものの、予想外の声量が出てひどく恥ずかしかった。
「こちらこそ悪い。…えっと、君は…」
直角に下げていた体を上げて見たその姿に思わずヒュッと喉が鳴った。
なんだこのキラキラとしたイケメンは。
サラサラの黒髪に優しげなアーモンドアイの瞳。高い身長にどこまでが脚なのだと思うほどに高い腰。
返事も忘れてその美しさにぽかんとしていれば、自分の後ろから来た男性が嬉しげに声を上げた。
「飛鳥じゃん!おかえり!」
「一ノ瀬課長代理、お久しぶりです」