ハイスペ上司の好きなひと
モヤモヤとした嫌な気持ちが胸に広がり、それを打ち消すように首を左右に振った。
ーー今は会社、今は業務中…
私情を挟んで良いような場所じゃない。
そう思い直し席に戻ろうと給湯室を出たところで、デスクに戻っていた藤宮に飛鳥が何かを話しかけているのが見えた。
ただそれだけだ。
同じ業務に関わるのだから話すなんて当たり前。
仕事の話に決まってる。
そのはずなのに、飛鳥の藤宮を見る目はとても優しいものに見えた。
それと同時に、どこか切なそうにも。
「…っ」
こんな事なら知りたく無かった。
飛鳥の優しさも、素の笑顔も。
本来ならばそれは全部、藤宮だけに向けられるものだったのだ。
知らなければこんな勘違いなどせずに済んだのに。
ただ、憧れの上司と部下として、飛鳥とも藤宮とも関われたのに。
初めて込み上げる泣きたくなるような感覚をグッと堪え、紫は踵を返して給湯室へと戻った。