ハイスペ上司の好きなひと


引越しにひと段落がついたのは外の薄暗さが目立つようになった頃。

新居へと戻った時、良いのか悪いのか飛鳥の態度は変わらないままで、いつもの調子で家具の配置はこれで良かったのかと尋ねてきた。

複雑な気持ちを抱きながらもお礼を伝え、どちらともなく解散の雰囲気を醸し出した。


「飛鳥さん、本当に何から何までありがとうございました」


玄関まで見送りに立ちながら、紫は笑った。

これで本当に最後なのだと実感すれば言い得ぬ寂しさが込み上げてくるが、これ以上は引き留める理由も無い。

そんな胸の内を隠して言えば、飛鳥もまた感情の読めない顔で「ああ」と短く言うだけだった。


「帰りは気をつけてくださいね」
「大丈夫だ」
「あ、あと何度も言いますけどお礼をしたいので何がいいかまた教えてくださいね」
「ああ…それなんだが」
「はい」


ジッと視線を向けられドキドキと心臓が音を立てる。



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