ハイスペ上司の好きなひと
「いや、七瀬さんは今持っている仕事があるだろう」
「大丈夫です!もうほとんど終わっているので!」
嘘つけ!と思いながらも彼女を止める術も無く、七瀬はとびきりの笑顔で飛鳥からファイルを奪うように受け取る。
「えっとぉ、データ化ってどうすればいいんでしたっけ?」
七瀬はファイルを胸元に寄せ、分かりやすく飛鳥に擦り寄り上目遣いでそう問いかける。
つい昨日コピー機の使い方を教えただろうが!と言いたい気持ちをグッと堪えて「七瀬さん」と声を落として声をかける。
「主任は忙しいから私が教えます。…飛鳥主任、データ化はPDFに変えるだけで構わないんですか?」
「いや、年代別に統計も出して欲しい。グラフもあると助かる」
「承知しました」
そう言って立ち上がり、七瀬の背中を押す。
「じゃあ七瀬さん、昨日教えた通りにやってみようか」
「ええ〜!…もぉ〜分かりましたぁ」
明らかに不満げな態度を隠そうともしない七瀬に「この女…!」と拳が出そうになるのを我慢した。