ハイスペ上司の好きなひと


この手のタイプは学生時代の部活にもいたが相当苦手だ。

下手に男性を味方につけるからやり難い事この上ない。

絶対顔採用だろと心の中で文句を言いながらコピー機の前に立ち、案の定悪びれもせず分かりませーんと言いやがる女に殺意を感じながらもう一度最初から教える。

度が過ぎるようなら報告も辞さないとなと思いつつ、紫は日々そうして苛々を募らせていた。


そんな事が続いたある日。

七瀬のせいで自分の仕事に手が回らず残業を余儀なくされ、21時がこようというのに紫はデスクから離れられないでいた。

七瀬の厄介さは日々エスカレートしていき、電話対応も上の目がある時は取るのだがそれが無いと無視、しかし内線だけは誰より早く取るのだから社内からの評判は悪くなく、腹が立つ事この上ない。

それを注意すれば「私英語苦手なんですぅ」とまたもや瞳を潤ませる。

ふざけるなここは海外営業部なんだよ、海外からの顧客対応も多いんだぞと机をひっくり返したくなったのはいうまでもない。

もはやこればかりはやる気の問題だろう。

完全に舐められている感じが否めないが、どう言っても響かないのだからこれ以上はやりようがない。

あと数週間、一般研修を終えるまでの我慢だと自身に言い聞かせていつもより荒いタイピングで残りの業務をこなしていた。



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