ハイスペ上司の好きなひと
鬼気迫る勢いで今日中にと言われた仕事をなんとか終えると、紫は机に倒れるように力無く突っ伏した。
ーーああだめだ、気力が…
精神的な疲れが蓄積しているのだろうか、以前にも増して食欲が減っておりそのせいか力が入らない。
体重計が家に無いので分からないけれど、確実に痩せている気がする。
母からも帰省の度に痩せすぎを心配されているし、来月の兄の結婚式で顔を合わせる事になった時にまた小言を言われるのは嫌だなあと思い、とにかく帰らねばと顔を上げた。
「うお!」
「!?」
タイミング悪く誰かが頭上に居たようで、ぶつかりこそしなかったものの、すぐ上で人の声が上がり慌ててそちらに目を向けた。
「あ、飛鳥主任!すみません!ぶつかりませんでした!?」
しかもそこに居たのは飛鳥で、サッと血の気が引いた。
飛鳥は大丈夫だと言いながら、隣の席の藤宮の椅子を引いて腰をかける。
「あれ…というか、主任はなんで会社に…?帰られたんじゃ?」
社内システムの在席の有無も、彼の名前の横の文字は帰宅に切り替わっており、いつだったか確かに退社するのを確認したはずだ。
そう思い首を傾げていれば、目の前にコーヒー店のカップが置かれた。