ハイスペ上司の好きなひと
「同期と飲んでたんだが、古賀がまだ帰宅してないってそれで見たから来た」
それ、と言いながら飛鳥は紫の画面を指す。
紫の名前の隣にはまだ在席と書かれており、成る程と苦笑した。
「わざわざ抜けてこられたんですか?どうして…」
「心配だっかからに決まってるだろ」
「……」
どうしてこの人はこうも自分を振り回してくるのだろう。
いっそ放っておいてくれたら、早く諦めがつくのに。
「…すみません。私もこんなに遅くまで残るつもりは無かったんですけど」
「新人教育が難航してるのか?」
「分かります?」
「分からない方がおかしいだろ」
そう言いながら、飛鳥は自分用に買ったであろうコーヒーに口をつける。
紫もお礼を述べながらカップを取って一口飲めば、ミルクのたっぷり入った甘いカフェオレでその温かさに感動で思わず涙腺が緩みそうになった。
「それに、少なからず俺も迷惑をかけてるみたいだから気になってたんだよ」
「はは…あからさまに狙われてますもんね、主任」
「笑うなよ。これでもかなり困ってるんだ」
そうでしょうね、と言いながら紫は力無く笑う。
藤宮が居る目の前であんなにあからさまに口説かれていたらそりゃあ嫌だろう。