ハイスペ上司の好きなひと


ふう、と短く息を吐きながらカップを置けば、飛鳥は気遣わしげに声をかけてきた。


「…古賀、なんか痩せたか?」
「え、嘘。そんなにあからさまですか?」
「少なくとも俺にはそうだな」
「うわ…マズいな…」


自分に興味のない飛鳥にバレるレベルで身体に出ているのは不味い。

思った事を口にし、手早く机の上を片付ける。


「えっと、せっかく気遣って頂いたのにすみません。私帰りますね、少しでも食べておかないと」


言いつつ鞄を手に取れば、同じく飛鳥も立ち上がる。


「なら俺も帰る」
「え?あ…そうですか」


では途中まで一緒に、と言ってフロアの施錠をしてビルから出れば、すっかりと夜の更けた空気が肌を刺す。


「新人教育の話だが、上に打診して担当を変えてもらうか?」


先程の話の続きだろう、こちらの体調を考慮してくれているのは分かったけれど、紫は「いいえ」と静かに断った。



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