ハイスペ上司の好きなひと


いつかはやらかすだろうとは思っていたが、どうしてこうも彼女は自分勝手なのか。

今すぐ割って入るか飛鳥の返事を待ってから入るかと頭を悩ませていると、比較的早く飛鳥が答えを返していた。


「悪いがその気持ちには応えられない。諦めてくれ」


まあそうだろうなと分かってはいたが、果たしてこれを喜ぶべきか悲しむべきか複雑な気持ちだ。

けれど気持ちの無い相手には思っていた以上に冷たい声で塩対応するのだなと思うと、いざ自分の立場を想像してしまって辛くなった。


「ど、どうしてですか?まだ藤宮係長の事が好きだからですか!?」


その瞬間、ビシッと空気が凍りつくのが分かった。


ーー嘘でしょ、あの子なんて事…!


的確に地雷を踏み抜くその姿は勇敢と言えばいいのか怖いもの知らずと言えばいいのか、飛鳥の表情が見えない分余計に怖い。


「…なんでそう思った」


案の定というか、飛鳥の声色は怒気を孕んでいた。


「上の方では有名な話なんですよぉ。飛鳥さんが入社時から藤宮係長に懸想してるって…」


そうだったのか。

確かに課長代理である一ノ瀬はこの事を知っている口ぶりだった。

それにしたってもっと言い方があるだろう。

しかし七瀬は鋼の心臓なのだろうか、事ここに至りなからも声を潤ませ猫撫で声を上げる様には恐怖すら覚える。

様々な感情が渦巻きつつ、紫の体は全身が心臓にでもなったかのようにドクドクと鳴り響き、その場から一ミリも動けないでいた。



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