ハイスペ上司の好きなひと
大事なデータの数字を勝手に弄って誤魔化したり、電話でのぞんざいな応対を彼女が隠れてしていた事はもちろん知っていた。
注意したところで反省しないし、研修中の出来事でまだ紫がフォローできる範囲だったので指摘するだけに留めておいたけれど、正式に配属になっても社員の足を引っ張ろうとするのならば例え後輩イビリだと責められたとて言ってやる。
それで彼女が泣こうが上に言いつけようが、もうどうでも良かった。
やれるものならやってみろ、だ。
こちらの本気の覚悟が効いたのだろう、七瀬は何も言わずに布巾で机を拭いていく自分を青い顔で見つめていた。
「あとここ、午後から大事な来客が入るからいつまでも私用で居座られたら迷惑なの。先輩に偉そうな口叩くならそれくらいの配慮ができるようになってから言いなさいよ」
「で、でも、今は昼休みだし…」
「うん、だから?」
で?と圧を込めて睨めば七瀬が一歩後ずさる。
「此処は学校でもなければホストクラブでもないから。恋愛ごっこがしたいなら他所でやって」
邪魔だとはっきり告げ、シッシッと追い払うよう手を振れば、彼女は顔を真っ赤にしながらも何も言う事なく出て行った。
女だらけの部活で先輩達の理不尽なイジメに耐え抜いた根性舐めんじゃないよと頭の中で舌を出しながらそれを見送り、何事も無かったようにペットボトルを置いていく。
七瀬が出て行ったことで部屋が静かになり、気まずさが一気に広がった。
言ったことに後悔は無いけれど、たかが2年目の社員が後輩向いて牙を剥くなんて若輩者のくせに何を言ってるんだと思われたかもしれない。
何か言わなければと思うが言葉が見つからず意味もなく資料を整えていると、重たい口を割ったのは飛鳥だった。