ハイスペ上司の好きなひと
「…聞こえてたのか」
その言葉に誤魔化しても無駄だろうと思い、小さな声で「はい」と肯定した。
「立ち聞きするつもりはなかったんですけど…すみません」
「いや…」
飛鳥は再び口を閉ざす。
気まずいのはお互い様だ。
チラリと飛鳥の顔を見ればそこに怒りの表情は無く、ただ苦い顔をして目を伏せていた。
「誰にも言いません。…というか、既に知ってたので、今更言いふらしたりしません」
「…は?知ってた…?」
顔を上げた飛鳥と目が合ってしまい、今度はこちらが目を逸らした。
「えっと…実は、一ノ瀬課長代理の結婚式の夜、飛鳥さんが酔っ払って口にされてたので…その時に、たまたま…」
「……」
「…そう、なんですよね?」
はっきりとは口にできなくて曖昧な聞き方をした。
けれど何を問われたのか分かったのだろう飛鳥は静かな声で、けれどはっきりと応えた。
「…ああ、そうだ」
その瞬間、確実にこの恋の終わりを告げられた。
分かっていた事なのに、それでも引き裂かれるような胸の痛みは自分ではどうすることもできなかった。
「そう、ですか」