ハイスペ上司の好きなひと


いざ結婚式が始まると社内恋愛だった2人の式はそれなりに人数がいて両親は挨拶回りに忙しそうだったが、兄妹である蒼慈と紫は大体席に座ってそれを眺めるくらいしか役目は無かった。

興味の無さから途中あまりにも暇を持て余して欠伸をしてしまい、母にぶっ叩かれて蒼慈から笑われたくらいしか記憶に残らなかった。


数時間後に無事に式が終わり、炎慈達は二次会へと向かって行ったので母の発案で残りの家族で夕食を共にすることになった。

その際、母から唐突に自分に向かって恋人の有無を聞かれた時にはタイムリー過ぎて咽せた程だった。


「え、なに急に」
「急じゃないわよ。炎慈も結婚したし、紫も今年28でしょ?いい年なんだから気になるのは普通じゃない」
「そう、かもしれないけど…」


言葉尻を濁す紫に、対面に腰掛けていた蒼慈が腹の立つニヤケ顔で会話に割って入った。


「母さん聞いてやるなって。紫の奴、フラれたばっかなんだからさ」
「はああ!?」


驚きと怒りで身を乗り出せば、気をよくした兄はケラケラと笑う。


「やっぱそうかのかよ。お前ホント分かりやす過ぎだろ」
「か、カマかけるなんて卑怯すぎる!」
「あんた達うるさい!」


喧嘩が勃発しそうな雰囲気に母が割って入り、紫は乗り出していた体を引っ込め不機嫌顔で椅子に座り直した。


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