ハイスペ上司の好きなひと
相変わらず遠慮のない母は紫の家で好き勝手に振る舞い掃除が甘いだのまともな食材がないだの小言を言うだけ言って眠りについた。
ようやく小うるさい母から解放された紫は、布団につきながら兄の言葉を思い返していた。
ーー良い子を演じてる、か…
そんな意識は無かったけれど、妙に納得してしまったからそうなのかもしれない。
学生の頃に付き合っていた佐倉とは素で向き合っていた分喧嘩も多かったけれどそれでも仲は良かった。
付き合いの長い真由菜とも同じだ。
そう思うと、なんだがそのままの自分で良いと言われたみたいで救われた。
飛鳥にフラれたのは自分のせいじゃないと、言ってもらえた気がした。
蓋をしたこの気持ちがいつ消え去ってくれるかは分からないけれど、今度恋をするならば兄の言う通りありのままの自分をぶつけてみてもいいかもしれない。
落ち込んでいた気持ちが幾分か晴れたところで眠気がやってきて、そのまま抗うことなく紫は眠りに落ちていった。