ハイスペ上司の好きなひと
…ならもういっそ、打ち明けてもいいんじゃないか。
どう足掻いたところで全て無駄なのだ。
もう疲れた。
全部がもうどうでもいい。
「飛鳥さん」
覚悟を決めてしまえば不思議と怖いとは感じなかった。
飛鳥の形の良い綺麗な瞳を見ても、胸の痛みはあれどあの日のような泣きたくなる感覚は込み上げてこなかった。
「困らせたくなくて言うつもりは無かったんですけど、誤魔化せなくなったのでもう言いますね」
飛鳥の返事は待たない。
表情を強張らせる飛鳥をまっすぐに見つめて、ただ一言だけ告げた。
「私も本当は、飛鳥さんが好きだったんです」
答えは必要無かった。
だから想いを口にした勢いのまま紫は続けた。
「泣いた理由は単純です。飛鳥さんの気持ちをはっきり告げられて失恋した、ただそれだけです。だから何も気にしないでください」
「……」
「上司と部下、それ以上の関係は望みません。だから全部忘れてください。…私も、そうするつもりなので」
頭を深く下げ、業務に戻りますと言って部屋を出た。
飛鳥のショックを受けたような、困った表情を思い出しては笑いが込み上げた。
それはそうだ、信頼していた部下から劣情を抱かれていて困らない筈がない。
ズキズキと痛む心に目を逸らし、先に戻っていった秋山達を追いかけた。
ーーこれで本当に終わり
自分の気持ちを言うだけ言ってズルいと思わなくはないけど、それくらいは見逃して欲しい。
もう二度と、あなたを好きだとは思わないから。
微かに潤みかけた瞳を手で拭い、早足でデスクへと戻った。