ハイスペ上司の好きなひと
本来陰口は好きではないけれど、七瀬に関しては彼女達の言う事が事実であり過ぎたのでフォローのしようが無かった。
ただこの話題に巻き込まれるのは避けたいなと思ったので早めに用を済まして出てしまおうと個室を後にして洗面台へ向かえば、女性の1人が視線を投げかけてきた。
「古賀さんも災難だったね。大丈夫?上から何か言われてない?」
「え!?あ、はい…なんとか」
突然話を振られてビクリとしながら答えると、その人はにやりと笑った。
「まあでも、古賀さんには藤宮派閥がついてるから大丈夫か」
「派閥ってあんた…バレたら怒られるよ」
「え〜でも実際あそこの同期強いじゃん。私今回の事であの人だけはキレさせないようにしようって学んだわ」
「まー…それは確かに…」
だから私達はちゃんと分かってるからねと言われ、ありがとうございますと苦笑いで返せば彼女達は再び互いに向かい合う。
「で、それはそうとして飛鳥さんだよ。さっき報告書回しに行ったらなんか雰囲気が刺々しくてちょっと怖かったんだよね」
「飛鳥さんが塩対応なのは前からじゃない?」
「うーん…そう言われたらそうなんだけど…」
それを聞きながら、そうなんだ…と紫は他人事のように思った。
仕事の関係でひと言ふたこと会話をする事はあったが、あの日以来徹底して一線を引いていてまともに顔も見ていなかった。
特別な関係は望まないなんて啖呵を切ったはいいものの、忘れるには好きになり過ぎてしまっていて以前のように自然に振る舞うのはまだ無理だった。