ハイスペ上司の好きなひと


触れこそしなかったものの手を口元に添えられ、紫は黙ってこくこくと頷いた。


「だから古賀から電話があって驚いたけど、すげえ嬉しかったんだ」
「……」
「本当に、嬉しかったんだよ…」


紫の口元にあった手が飛鳥自身の顔を覆い、そこで初めて視線が外れた。


「迎えに行ったら男が居て、気が狂いそうだった。絶対渡したくないって思った」
「っ、」


飛鳥の言葉に、頭はパンク寸前だった。

本当に言葉通り、好いてくれているのだと伝わってきたから。

飛鳥は空いていたもう片方の手を握り、懇願するようにそこに顔を埋めた。


「だから頼む。もう一度俺を見てくれ」


じわりと目に涙が溜まっていく。

けれど悲しみでないそれは溢れる事はなく、飛鳥の言葉をひとつひとつを大切に汲み取り心に沈めていった。

いつだったか彼への恋心を閉じ込めた箱が、飛鳥の真っ直ぐな想いでゆっくりと開いていく。

溢れ出したそれは、もう止める事は出来なかった。


「…はい、分かりました」




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