ハイスペ上司の好きなひと



「それは…大変だったな」
「否定はしません。けれどそれが主任に迷惑をかけていい理由にはなりませんから」


肩を落として落ち込む紫に、安心させるようにその肩に優しく手を置いた。


「さっきも言ったが会議は終わっていたし何も迷惑なんてかけられてない。そんなに自分を責めるな」
「主任…」
「それよりもだ。そんな事があってその家に住み続ける方が問題じゃないのか」
「えと…」


実のところ暴力を振るったと言ってもよくよく事情を聞けば男性が椅子を蹴り上げただけらしく、それが女性に当たったわけでもなければ掠ってすらいないという。

実際部屋の住人である男性は昼過ぎには帰ってきており、出社前の紫と気まずそうに顔を合わせていた。

なけなしの謝罪は受けたもののただの痴話喧嘩でここまで事を大きくする女性も女性なので、今後こういう事が無くなるという保証も無い。


「いや男側も男側だろ」
「…まあ、聞こえてきた限りその男性が浮気を繰り返していたのがそもそもの原因みたいですし…」
「破れ鍋に綴じ蓋ってやつか」
「どっちもどっちですね」


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