ハイスペ上司の好きなひと
「あ、飛鳥さ…」
顔中が真っ赤になっているのはアルコールのせいではないだろう。
微かに潤んだ瞳に情欲を掻き立てられ、再びキスの嵐を降り注ぐ。
服の裾を掴む手に抵抗は無く、小さく震えていた。
けれどそれが恐怖からくるものでない事は、彼女の表情を見ればすぐに分かった。
「名前」
「え…」
「名前で呼んでくれ」
露わになった額を撫でながら言えば、紫は真っ赤な顔のままぱくぱくと口を動かす。
けれど飛鳥に撤回するつもりは毛頭なく、ただ黙って愛しい声で名を呼ばれるのを待った。
「…航輝、さん」
か細く小さく呼ばれた自身の名前は想像以上の破壊力があり、理性を壊すには十分すぎるほどに甘かった。
飛鳥は口の端を上げると、すぐさま紫の首裏と肘の裏に手を入れ彼女の体を軽々と持ち上げた。
「え!?ちょ、」
「ここじゃ痛いだろ。場所を移す」
「場所って…」
足の向かう先が飛鳥の私室であった事を悟ると、紫の体に力が入るのが分かった。