ハイスペ上司の好きなひと
「帰りに来いだなんて、何か用事でした?」
「まあ用事といえば用事だが、ただ紫の顔が見たかったから」
「そ、そうですか」
ぽぽぽと頬を赤く染め両頬を覆う。
顔が熱くなるのも仕方ない。
だってまだ正式に付き合って2週間なのだから。
そんな紫を愛おしそうに見つめ、飛鳥はゆっくりと肩を抱く。
「とりあえず奥へ行こう」
そのままリビングへ連れられると、すっかり元気を取り戻した観葉植物が自分を迎え入れ、元気になってよかったねと声をかけた。
「座って待っててくれ」
「?わかりました」
なんだろうと思いつつ素直にソファに腰を下ろせば、間も無くして飛鳥が自室から戻ってきてあるものを手渡してきた。
「え、これ…」
懐かしいそれに声を失った。
手渡されたのはかつて居候していた頃に使わせてもらっていた鍵だった。
「渡しとくから、いつでも来てくれ」
「…いいんですか?」
「寧ろ居てくれた方が嬉しい」
以前持っていたそれと大きく意味を変えた鍵に、言葉にできない喜びが込み上げてくる。
「ありがとう…すごく、嬉しい」
宝物のようにギュッとそれを大事に抱けば、飛鳥の手が伸びてきて顔の横の髪を優しく払った。
ゆっくりと近づいてきた顔を静かに受け入れキスを交わし、名残惜しそうに離れると額を付けて笑い合う。