ハイスペ上司の好きなひと



「なあ紫」
「なんですか?」


優しい言葉に同じくらい優しい声で返す。

飛鳥は頬に手を添えながら静かな言った。


「今の家の更新時期が来たら、解約してうちに来ないか」
「え…」


思わぬ提案に驚いて顔を離せば、飛鳥は至極真面目な顔で続けた。


「紫と一緒に住みたい。ダメか?」
「そんな事ありません。けど、それって…」


一瞬言い淀み、勇気を出して続けた。


「そんな先も、一緒に居てくれるって事ですか?」


その言葉に飛鳥は目を見開き、そして不満げに眉を寄せた。


「俺はこの先ずっと紫の側に居るつもりだが、紫は違うのか?」
「そ、そうじゃないんです。けど…」
「けど?」


優しいのに何処か圧を感じるそれに少しだけ身を引いてしまった。


「自信が、無くて」


ぽそりと言い、そして続ける。


「航輝さんはすごくカッコよくてモテるから、私みたいな平凡を絵に描いたような、ただ真面目な良い子ちゃんなんて飽きられちゃうかも、って…思って…」
「なんだそれ」
「私は真剣です!それに…会社には藤宮さんも居ますし…」



< 210 / 244 >

この作品をシェア

pagetop