ハイスペ上司の好きなひと
そこまで言ってハッと口を手で押さえた。
疑うつもりなんてないのについ卑屈になってしまった物言いに後悔が込み上げる。
恐る恐る飛鳥の表情を見れば、案の定困った顔をしていた。
「困ったな」
「そうですよね、ごめんなさい。こんな言い方良くないですよね…」
「いや違うんだ。紫が悩んでるのが分かってるのに、嫉妬が嬉しいと思っちまう自分に困ってる」
「なっ…酷い!私は本当に不安で…」
まさかの返事にムキになれば、飛鳥は悪いと笑いながら自身の胸元に紫を寄せた。
「ずっと未練に雁字搦めになってた俺を救い上げてくれたのは紫なんだ。この先一緒に居たいと思うのは紫だけだよ」
「…本当?」
「ああ。それに紫はただの良い子ちゃんなんかじゃねえぞ。確かに努力家でそこは尊敬できるけど、俺にとっては小悪魔だ」
「なんですかそれ、初めて言われました」
「部下って事でうまく線引きしてるかと思えば急に懐に飛び込んできて優しい顔やら可愛い顔で惑わしてくる。十分小悪魔だろ」
「?身に覚えがないんですが…」
「分かってないのがタチが悪い。それに、」
言うや否や飛鳥は身を乗り出して押し倒してきて、目の前いっぱいに飛鳥の整った顔が映し出される。