ハイスペ上司の好きなひと
どういう意味だと聞こうとしたところで辞めた。
何となく察してしまったからだ。
飛鳥がそこまで断言するという事は、余程希望のない恋なのだろう。
気にならないと言えば嘘になるが、傷口に塩を塗り込むような真似はするべきではない。
そう思い至り、紫は視線を落として小さく言った。
「…余計な事を聞きました。すみません」
「いやいい。俺の事を考えての事だろう?」
「それは…そうですけど」
「なら古賀は何も気にせず居たらいい。前にも言ったが、頑張ってくれてる君の助けになりたいだけだから」
飛鳥がそう言ってくれて安心した。
間違いなくそのはずなのに、飛鳥が見たこともない程に辛そうな顔をするから、胸の痛みはしばらく拭うことが出来なかった。