ハイスペ上司の好きなひと
ーー勘違い、しないようにしないと。
先日の一件で分かった。
飛鳥にはその想い人しか見えていない事を。
だからこそこうして自分に何の下心も無くルームシェアを持ちかけてきたのだ。
彼の素顔を見るたびに高鳴る心臓に毎度セーブをかけるのも、いつまで保つか分からない。
だから絶対、彼にだけは恋をしてはいけないと毎日言い聞かせている。
その先に待っているのは、どうせ叶わぬ恋に苦しむ地獄なのだから。
送ったメッセージに既読が付き、ありがとうと彼らしくないスタンプが送られてきた。
紫が愛用しているもので、何故それを課金してまで購入したのかその心内はわからないが少しだけ頬が緩んだ。
そうして紫は再びスマホを手から離し、仕事へと戻った。