ハイスペ上司の好きなひと
「飛鳥主任の好きな人が誰なのか、みんな気になってるのよ!」
やはりというべきか、普段接点のない女性から頼まれる内容など分かりきっている。
これまで牽制こそあったものの、こうして直接頼まれるのは初めてだった。
「好きな人って…いるの確定なんですか?」
さり気なくすっとぼけてみたものの、返事は「当たり前じゃん!」だった。
「どんなに可愛い子がアプローチかけても靡かないし、かと言って恋人が居るのか聞けばそれも違うって言うし。ならもう理由は1つでしょ?」
「けど…私、主任とプライベートなお話が出来るほど親しい訳じゃないですし」
「今現在主任が1番信頼してる女性社員は古賀さんだけなんだよ〜!ね、お願い?」
「こ、困ります…」
確かに他の女性と比べて飛鳥の態度が柔らかい自覚はあった。
けれどそれはただ部下として精一杯努力している自分を認めてくれているだけあって、そこに他意は無い。
ルームシェアにしたってお互いに自室にいる事が多いから軽々しく「好きな人誰?」なんて聞けるほど打ち解けているわけではないし、何より、あの辛そうな顔を見るのは二度と避けたかった。
懇願と断りの押収を続けていると、その騒ぎを聞きつけたのだろう、ほぼその場に入ることの無い顔がひょっこりと顔を出してきた。