ハイスペ上司の好きなひと
「お電話代わりました。古賀と申します」
『初めまして。フランス支社の飛鳥です』
思ったより若い声だと少し拍子抜けした。
そういえば藤宮が年下のような言い方をしていたなと頭の片隅で思い浮かべる。
「お忙しい中お電話いただきありがとうございます。今後藤宮係長の事務仕事を引き継がせていただくので、よろしくお願い致します」
『係長から聞いてる。そちらに配属になったら色々と面倒をかけるが、こちらこそよろしく頼みます』
「は、はい!精一杯頑張ります」
電話だというのにうっかり頭を下げてしまい、少し恥ずかしくなった。
『ただ申し訳ないが、こちらの引き継ぎが難航していて係長の産休前に戻ることが出来そうにない。戻ったらすぐに仕事を任せる事になるが構わないか?』
「大丈夫です。出来るだけ負担がかからないように係長が重要な仕事は済ませてくれているので」
『そうか』
そう言った飛鳥の声は少しだけ柔らかく感じた。
一体どんな人なのだろうと思い浮かべていると、電話の向こうで彼の名前を呼ぶ声が聞こえた。