ハイスペ上司の好きなひと



「ね〜紫のとこ結構大きめの商社でしょ?誰か良い人いないの?」
「そう言われても…私まだ入社して8ヶ月だし、紹介できるほど仲の良い人なんていないよ…」


困ったように言えば、真由菜はどこから出しているんだと言いたくなる唸り声を上げる。


「はー…結婚はまだまだ遠い話だなあ…」
「真由菜にそれ言われるときついね」
「なに、紫もようやくその気になってきた?」


突っ伏していた顔を上げ、同志よとでも言いたげに目を向けてくる。


「まあ…いずれはね。でも今は仕事優先」
「いつからそんな仕事に情熱注ぐようになったの?」
「お金が無いんだよ…貯金も無いのに結婚なんて贅沢言ってられないでしょ」
「ふうん…で、その心は?」
「はい?」
「だっていずれは〜とかお金が〜とからしく無い事ばっか言うんだもん。前は興味無いですみたいな顔してスカしてたクセに」
「酷い言われようだな…」


ため息混じりに言い、カフェモカの入ったカップをそっとソーサーの上に置く。


「前は余裕が無かったんだよ、いつも上司を怒らせないようにすることばっかり考えてたし」
「あー…あの今の時代に珍しいほど真っ黒なあの会社ね。それで佐倉くんとも別れたんだっけ」
「直接の原因は違うけどね。就職決まってから喧嘩も増えてたし」


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