ハイスペ上司の好きなひと


相変わらず震えは治らないものの、窓を叩く音も女の金切り声も聞こえなくなっていた事もあり恐る恐る鍵を開け、警戒しながらドアを少し開き様子を伺う。

部屋はシン…としており、外にいる警察が隣の家のドアを叩く音が聞こえた。

その後腰が抜けたまま四つん這いでなんとか玄関まで進み、対面した警官に保護された。

紫の酷い顔色を見て側に付いていてくれたのは女性警官で、肩からブランケットをかけてもらいながらずっと背中をさすってもらっていた。

安心したはずなのになかなか震えが引かず、ようやく言葉を発する事が出来たのはその30分後だった。


「では古賀さんは隣人の方とも今回乗り込んできた女性とも全く面識が無いのですね」
「ありません…すれ違うくらいはありましたけど、話した事も無いです」
「そうですか…お気の毒でしたね」
「あの…女性の方が泥棒猫とか言ってましたけど、どういう意味なんでしょう?」
「ああ、それなんですが」


どうやら面識が無いと思っていた女性は前回警察沙汰になった時と同じ女性で、その際に破局したらしいのだがその後ストーキング行為に発展したらしい。

妄想がエスカレートするうちになぜかその矛先が隣人であり女性だった紫に向き、今回の暴挙に至ったとのことらしいと警官は告げた。

因みに言うと、鍵穴に傷があり何度か侵入を目論んだ形跡もあったと言う。

その言葉を聞き背筋がゾッとし、忘れかけていた恐怖が蘇る。

ストーカーに加え住居侵入の罪もあり女性は塀の向こうに行くだろうと言われたが、そんなことで恐怖が無くなる訳もなく紫はまた青い顔で黙り込んだ。


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