ハイスペ上司の好きなひと



「今夜は此処で寝泊まりするのは辛いでしょう。ご家族に連絡されますか?」
「…いえ、やめておきます。実家は遠方ですし今から帰るのは無理なので」


何より、こんな短期間に2回も警察沙汰に巻き込まれたと知れば母が卒倒するのは目に見えている。

下手すれば強制的に引き戻されるなんて事もあり得る。


「では外泊されますか?それでしたらこちらでお送りしますよ」
「…そうですね…」


今はまだ日が残る夕方ではあるが、ここ最近日が短くなっており暗くなり始めたら一気に夜が来る。

その中を1人歩くのは流石に不安なので送迎をお願いしようとした時だった。


「すみません、あの…」


男性警官が声をかけてきて、紫と女性警官がそちらに目を向ける。


「この方の同居人という方がいらっしゃっているのですが、通しても構いませんか?」
「は?同居人?」


怪訝そうな顔で警戒する女性警官に、紫はハッと我に返り慌てて間に入った。


「す、すみません!その方知り合いです。事情は話すので通してもらっていいですか?」


紫にそう言われた男性警官は軽く頷き人混みの方へと戻り、紫は一時的に別の家にお世話になっていた事を話した。

女性の警戒が解けた頃、先程の男性警官に連れられた飛鳥が近付いてきた。


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