ハイスペ上司の好きなひと


そうして飛鳥との電話越しの初めての交流を終え、その後は必死になって仕事を覚えているうちにあっという間に2ヶ月の時間が過ぎ去ってしまった。

結局飛鳥の言葉通り、藤宮が会社に居るまでの間に彼の帰国は叶わなかった。

けれどこの2ヶ月の間に電話での仕事のやり取りは続けていたのである程度の人物像は掴めてはきていた。

けれどやはり、心から信頼している先輩が居なくなる不安と寂しさは拭えない。


「藤宮さん、出産頑張ってくださいね…!」


彼女の最後の出勤日の退社時、感極まってそう言って見送れば藤宮は相変わらずふわふわとした笑顔を見せた。


「ありがとう。一応年齢的に高齢出産にはなるから不安だけど、頑張るよ」
「はい!赤ちゃん生まれたら連絡くださいね!」
「うん。私もできるだけ早く復帰できるよう頑張るね」


聞くところによると家事なんかは彼女の旦那の方が技量が上らしく、そのおかげで思う存分仕事が出来ているのだと以前言っていた。

出来るだけ育児に専念できるよう応援したい気持ちはあるが、やはり早く戻ってきてくれるという言葉は心強い。


最後の最後までこちらのフォローを忘れる事をしなかった優しい上司を見送り、紫は翌週からに備えて不安と期待で胸を満たすのだった。



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