ハイスペ上司の好きなひと
梱包材に包まれたそれを笑顔で受け取りほくほくとカバンに詰め込む紫を見て、飛鳥が判断が早いなと笑って言った。
「兄達のせいで少しでも悩んでるうちに無くなってるなんて事が日常茶飯事だったもので。大きな買い物でない限りは即断即決を決めてます」
「なるほどな」
「飛鳥さんは何か買われないんですか?」
飛鳥の手には紫が最初に買ったプレッツェルの店で購入した惣菜パンだけが握られていて、他に手を伸ばそうとはしていなかった。
紫がホットワインを手にした時も悪酔いするからと断っていたし、この人は本当に物欲が著しく欠けているなと思わざるを得ない。
「あー…俺は…」
言うや否や、少し戻ってもいいかと飛鳥が来た道を戻り小物が並ぶ屋台の前へと立つ。
白と赤で彩られた可愛い小物達とその前に難しい顔で立つ背の高い飛鳥とのコントラストはいささか不釣り合いにも見えたが、この店で何か買いたいものでも思い浮かんだのだろうか。
飛鳥はむっつりとしたまま黙り込み、小物達を見つめている。
声をかけるのもいかがなものかと思い側でそれを見守っていたが、不意に声がかけられた。
「古賀ならどれを選ぶ?」
「え、私ですか?」