ハイスペ上司の好きなひと
「すみません、でも一気に貼った方が良いかと思いまして」
「大丈夫だ…寧ろ手を止めさせて悪い、何か作ってたんだろ」
「ああ、これは飛鳥さんが食べられそうならと思って用意したお粥です」
「俺の…」
飛鳥は頭が上手く回らないのかそれきりこちらを見つめたまま黙り込んでしまった。
何を考えているか分からない表情にどうしていいか分からず視線を落とせば、飛鳥が大量の汗をかいていることに気付いた。
これは何より先に着替えてもらわねばと頭を切り替えたところで急に飛鳥が「食べる」と口にした。
「え?食べられるんですか?」
「今朝より熱も下がったし楽にもなった」
「解熱剤が効いたみたいですね。良かったです」
そう言いながらちらりと鍋に視線を向けた。
「えっと、実はまだ出来上がってなくて。もう少しかかりそうなので部屋で休んでてもらっても良いですか?」
「分かった」
「あ!その前に着替え!すごい汗ですから着替えておいてくださいね!」
言ってからなんだか母親っぽい言い方になってしまったと思い、嫌だったかもしれないと不安になったが飛鳥は特に気にした様子もなく分かったと言って私室へ入っていった。
そういえば、年上だから失念しがちだが飛鳥は末っ子だった。
いや自分も一応は末っ子なのだが、年子の3兄妹の末っ子と年の離れた姉弟のそれでは少し違うのかもしれない。
ついでに言えば自分には粗暴な兄達も母には逆らえないどころか最近は優しさすら垣間見えるのだから、男性とはつくづくよく分からない生き物だ。