ぼっち姫と英雄

冷月という名の冒険者


 
 ギルドで買い取り料金を受け取った冷月は商業ギルドに出向き近くに空き家が無いか確認していた。冷月は適当にいい空き家があれば買い取りたいと商業ギルドの受付嬢に申し出たのだった。商業ギルドの受付嬢は、どんな空き家が必要か聞き出そうとしていたところに珍しく商業ギルドのギルドマスターが表に出て来たのである。受付嬢は慌てて通常の空き家の資料を用意していた。

 「今、ある空き家ですと此方とこちらになりますがいかがなさいますか?」

 「そうね、もう少し広い空き家は無いのかしら?見せてもらった空き家では少し手狭になりそうだから!」

 「ほう、今日(・・)はマジメに仕事をしているな。普段からそういう姿勢であれば評価も上がるのにな残念だよ!」

 「ギルドマスター、ただ今接客中なのでお話しは後にしてもらえますか?」

 「いや、今ここで言わしてもらう!おまえの・・・」

 「ギルドマスター今接客してる人物が誰であるか知ってるならば、その先の言葉を言わない方が身の為だと思いますが!」

 商業ギルドのギルドマスターが言葉を途中で止めたのは接客している人物を見たためである。彼女が担当していたのは冷月である。ギルドマスターがあのまま言葉を続けていれば商業ギルドごとこの町から消える事になったかも知れないのだった。

 冷月という冒険者は冒険者ギルドだけで無く国全体にも、その影響力が伝わっているのだった。冷月の本名は神無月と書いてかんのづきと読む名前の方は奈岐(なぎ)という。神無月(かんのづき)奈岐という人物はある国の姫だったのだが、家臣の謀略により国は滅び元々冒険者として登録していたことが幸いして冷月という冒険者名で活動している。
冒険者冷月として活動して来た奈岐は依頼をこなして様々な人脈を作っていた。その中でも奈岐が元姫だと知っている者もおり、その知識を借りたいがために冷月に指名依頼を出す王族や貴族もいたということだった。

 「そ、そ、そうだな」

 「話しが逸れてすいません!もう少し大きめの空き家となりますとこちらになりますが大き過ぎますかね?」

 「そうね、でも丁度いいかも知れないわ!私だけがずっと使う訳でも無いから問題無いかなと」

 「冷月さんソロ冒険者でしたよね?」

 「はい、ソロ冒険者です。それが何か関係ありますか?」

 「いえ、先ほど自分以外も使うようなことを言われてたので気になりまして」

 「たぶんですけど、私が空き家を購入したら押しかけて来る人達がいるから対応するのに丁度いいかなと思っただけですよ!」

 「冷月さんの家に押しかけて来るような人たちいるんですか?(命知らずな人)」

 「いますよ、だから今まで特定の場所に拠点を構えるようなことはしたくなかったんですけど今回は少し事情があって空き家を買うことにしたんです」

 「空き家とは言いますけど、この大きさは屋敷ですけどね。この辺ならまだ屋敷としては小さい方ですし造りもしっかりしてるのでおすすめではあるんですよ」

 「何か含みのある言い方が気になるんですけど何があるんですか?」

 「別にこれといって何かがある訳ではないのよ。ただ、ちょっと王城に近いくらいのことしかないから案して良いわよ!」

 「今、さらとおかしな事いいませんでした?王城に近いとかなんとか?」

 冷月は商業ギルド受付嬢の言葉に嫌な悪寒を感じながら受付嬢に更なる説明を求めるもこれ以上は私にはわかりませんのでの一点張りだった。しかたなく冷月はもう少しまともな物件の紹介をお願いしたいというのだがこれが一番まともな物件だと言い切られてしまったのだった。
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