彩度beige
「男性たちはもう来て中にいるからね。揃ったことだし入ろっか」

「うん」

真美の言葉に頷いて、私たちは店へと入った。

HPで見た通り、内装もおしゃれで素敵な店だった。

店内はほぼ満席だ。

奥まで進むと、半個室のような雰囲気のある部屋に通された。

「こんばんはー」

真美が挨拶しながら入っていって、私や里奈ちゃんたちも順に続いた。

奥から、真美、里奈ちゃん、明日咲ちゃん、私の順で椅子に座った。

緊張しながら、目の前に座る4人の男性たちにも会釈する。


(・・・うー・・・、久々この感じ。何とも言えない緊張感・・・)


男性たちは、全員スーツを着用していた。

スーツ姿の男性と向かい合わせで話すだなんて、食品会社を辞めて以来・・・、本当に、久々すぎることだった。

・・・やっぱりこれは緊張する。きちんと話ができるだろうか。

「こんばんはー。おー、さすが真美さんのお知り合い。美人揃いだなあ」

「ふふ、でしょー」

私の目の前に座る男性が、真美に向かってにこにこしながら声をかけた。

この方は・・・30代前半くらいだろうか。ガッシリとした体格の、優しそうな男性だ。

その男性に促され、メニューを見ながら、それぞれ好きな飲み物をオーダーしていく。

食事は、コース料理をすでに頼んでくれているらしい。

飲み物が揃ったところで乾杯し、軽く自己紹介が始まった。

まずは・・・、と、今日の主催で真美の知り合いだという、私の目の前に座っている男性が口を開いた。

「えーと、僕は松澤と言います。35歳なんで、今日は一番上になるのかな」

松澤さんは、ホテルや飲食店の経営や、SNS事業をしているそうで、この店も、彼が経営する店舗のひとつになるらしい。

そして今日のお会計は、全て松澤さんが持ってくれるそう。

「いいんですか!?」と、私と里奈ちゃん、明日咲ちゃんが驚くと、「うん。遠慮しないでたくさん食べてね~」と、松澤さんはにこにこ答える。

「ごめん、言ってなかったね。松澤さん、いつもこんな感じなの」

と、思い出したように真美が言う。


(そ、そうなんだ・・・)


真美の言葉を受けて、みんなで「ごちそうさまです!!」と感謝を伝える。

松澤さんはかなり裕福なこともあるようだけど、人に喜んでもらえることが、なにより嬉しいそうだった。

そして・・・松澤さんの隣に座っているのは、不動産会社を経営している佐藤さん・32歳、そのお隣は、塾を営んでいる森田さん・33歳。

プライベートな時間だからだろうけど、みんな親しみやすい雰囲気だ。


(よかった・・・、敦也みたいな感じの人ばかりだったらどうしようかと思ったけれど・・・)


敦也も最初は優しくていい人だったので、何とも言えないことだけど。

今日はなにより、主催の松澤さんの人柄が大きく関係しているような気がする。

とりあえず、和やかな雰囲気でほっとした。

「・・・はい、じゃあ次。次・・・、おーい、次、玲央(れお)だぞー。自己紹介!」

松澤さんの声かけに、森田さんの隣に座る・・・真美の目の前に座る男性が、「・・・ああ」と言って、持っていたグラスを置いた。

みんなの話を聞いていたのかいないのか、ひたすらワインを飲んでいたようだ。
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