彩度beige
(・・・あれ・・・?この人、どこかで見たことあるような・・・)


「レオ」と呼ばれた男性の、端正な横顔に目を向けた。

多分私と同じくらい・・・、30歳ぐらいだろうか。

耳にかかるぐらいの銀色の髪。

クールな感じの、かなり整った顔立ちの男性だ。


(うーん・・・、でも、こんなイケメン、一度会ったら忘れるはずがない気もするし・・・)


座っているけど背も高そうな感じだし、モデルやアイドルグループにいてもおかしくはない印象だ。

そう思うと・・・、著名人に似ているなっていうだけで、見たことがある気になっているのかもしれない。

「・・・一葉玲央(かずはれお)です」

銀髪の男性は、無表情でそれだけ言うと、ほんの少しだけ会釈した。

誰とも視線は合わせない。

緊張しているのか、ただただクールなだけなのか、愛想の悪いイケメンは、ちょっと怖く感じてしまう。

「こらこら玲央、もうちょっとにこやかに、愛想よく!」

「・・・はあ」

「はあ、じゃなくて。ほら、仕事も言って」

「・・・ああ・・・」

松澤さんの声かけに、銀髪の男性は、仕方ない、といった様子で返事する。

この様子・・・、今日の飲み会は乗り気じゃなくて、無理やり連れてこられた感じかな。

「・・・物書きです」


(物書き・・・)


というと、小説家?脚本家?それともライターとかになるのかな?

具体的にはなんだろう・・・と思っていると、真美は興味津々な様子で身を乗り出した。

「物書きって、色々なお仕事がありますよね。もしかして・・・、小説家とか?」

「・・・はい」

「えー!!マジですか!小説家なんてリアルで初めて会いました!!」

わあー!と、興奮気味に話す真美。

けれどすぐ、なにかに気づいたかのように、「えっと・・・」と、慎重そうな顔をする。

「あの、ちなみに、お仕事は小説だけを・・・?」

「・・・いえ」

「あ・・・、で、ですよね!小説家って不安定なお仕事でしょうから、それだけで生活なんてなかなか難しい気もするし・・・。そっか、そうしたらフリーランス?ひとり経営者っていうやつですね!」

なるほど、と、笑顔で頷くものの、真美は落胆しているようだった。

イケメン小説家の登場に、最初はテンションが上がったみたいだけれど、この様子だと・・・、真美の求める理想像とはちょっと違うのだと思う。


(仕事を聞かれて『物書き』って答えたんだから、きっとそれが本業だもんね・・・)


そして、その他に仕事をしているのだということは、空いた時間にバイトをやっているのかな。

サラリーマンには見えないし・・・。

小説家としての収入だけでは心もとなくて、そういう働き方を選んでいるのかもしれない。
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