彩度beige
(と、すると・・・、『安定』からはちょっと遠い気がするし・・・)


真美はできるだけ早く結婚して落ち着きたいと言っている。

でも彼は多分だけれど・・・、アーティスト気質で、不安定要素が多そうだ。


(もっと若い時ならいざ知らず、30歳からお付き合いするにはちょっと勇気がいる人だよね)


友達として、ならもちろん話は別だけど。

銀髪で自由な感じがするし、金銭面や安定性・・・、いろいろまるっと総合すると、結婚までに至るには、道のりは結構険しそう。

見ると、里奈ちゃんや明日咲ちゃんも若干テンションが下がっている。

2人ともまだ若いけど、やはり安定を求めているのだろうか、「バイトをしているであろう小説家」は、イケメンとはいえ恋愛対象外のようだった。

「こら、玲央。補足しろ、もっと言うことあるだろう」

女性たちのテンション降下を感じ取ったのか、松澤さんが横から叫ぶ。

けれど、銀髪の彼は「いえ別に」と、クールな態度を崩さない。

「あー、もー!こういう場では、おまえはいつもそんなんだからなあ・・・。いいよ、オレが説明するから。えっとね、こいつは・・・」

と、松澤さんが、私たち女性に向けて何かを言いかけていた時だった。

「あれ?松澤さんじゃないですかー?」

半個室の入り口から、聞き覚えのある声がした。

一瞬で、私の身体がビクッとなった。

忘れたいのに、忘れていなかったこの声はーーー。

「ああ!秋田さん、こんばんは」

松澤さんが笑顔で応じる。


「秋田さん」。


この声の主は、やっぱり敦也だ。

私は、声の主と目が合わないように、すぐに下を向いて気配を消した。

「先日は、うちのPR動画作っていただいてどうもありがとうございました。おかげで売り上げも好調なんですよ」

「おー、そうなんですね!それはよかったです」

敦也の言葉に、松澤さんが笑顔で応じる。

私は、これでこのまま帰ってほしい、私に気づきませんように・・・と、心の中で強く願った。

けれど。

「・・・あれ?」

「ちょっと失礼」と言って、敦也が半個室の中に一歩足を踏み入れた。

そして、私の顔を覗き込む。

「もしかして、衣緒?」

「・・・・・・」

「やっぱり・・・!すげえ偶然」

「・・・、どうも・・・」
< 13 / 101 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop