彩度beige
敦也との結婚が正式に決まった後に、私は食品会社を退社した。

昇進の話も出ていたし、そもそも仕事が好きだったから、結婚後もできれば続けたかったけど、敦也は私に専業主婦を望んでいた。

敦也の周りにいるご夫婦が、夫は経営者、妻が専業主婦、という家庭が多く、その構図に敦也は憧れていたからだ。

『奥さんたち、みんな料理うまいんだよなー。いつもみんな綺麗だし。家事も完璧って感じでいつ行っても部屋もきれいに整っててさ。だから、衣緒にもああいうふうになってもらいたい』

頻繁に開催されている、経営者同士のホームパーティ。

婚約が決まってから私も同伴させてもらうようになったけど、本当に、奥さまたちはいつ会ってもみんなとても美しく、お家は綺麗に整っていて、用意された料理はどれも絶品だった。


(別世界だ・・・)


最初はとても驚いて、この世界に入っていけるのか、入っていいのか心配だった。

けれど敦也の妻になる以上、そんなことは言っていられない。

仕事には、未練がないと言ったら嘘になる。

だけど私はなにより敦也のことが大好きで、大切で、彼の期待に応えたかった。

だから私は仕事を辞めて、家庭に専念すると決めたんだ。











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