彩度beige
それから、家族構成や学生時代のこと、仕事についてなど・・・、様々なことを質問された。

取材を受けるなんて初めてだったし、敦也とのことをメインに聞かれるだろうと構えていたから、私についてばかりを聞かれてちょっと拍子抜けをした。

また、敬語を止めた効果が意外と大きかったのか、段々と話がしやすくなっていき、私の緊張も徐々にほぐれていった。

「・・・へえ。じゃあ、今のパン屋も長く続けたいわけじゃないんだ?」

「うん。仕事自体は楽しいし、居心地もすごくいいんだけど・・・、パートだし、このままずっと実家暮らしってわけにもいかないし」

・・・そう。

母の紹介で働き始めたパン屋の「スピカ」は、働きやすいし居心地がいい。

母の友人であるオーナー夫妻・・・尚道さんも紀代子さんも優しいし、パートにしては待遇がいいとも思う。

離婚して引きこもりがちだった私に、「一日2時間、週一からでいいから」とわざわざ声をかけてくれ、そこからゆっくり元気を取り戻すことができたのは、両親やオーナー夫妻が温かく見守ってくれたおかげだと思う。

だから、「スピカ」にはできるだけ恩返しをしたいと思うけど・・・。

両親もオーナー夫妻も、私の「これから」を、とても気にしてくれている。

だから、私がちゃんとやりたいことを見つけて進んでいって、みんなを安心させることこそが、恩返しのような気もしてるんだ。


(不安はすごくあるけれど、私自身、働けたらまたあの頃みたいに働きたいし・・・)


「やってみたい仕事はあるの?」

「うん、色々興味はあるんだけど・・・。料理が好きだし、前働いてた食品会社がすごく楽しかったから。食に携われる仕事はいいなと思ってる。あとは・・・というか、実はこっちが本命なんだけど・・・、インテリア関係とか、雑貨屋さんで働いてみたいっていう気持ちがあるんだ。パン屋で働き始めたら、接客結構楽しいし、雑貨屋さんって、昔からすごく好きなんだよね」

東通りの雑貨屋さん・・・「Lynx」のことを思い出す。

昔から、かわいいものに溢れたああいうお店が好きだった。

「おしゃれ」っていうよりも、「かわいい」で溢れた雑貨屋さん。

敦也には、ああいうお店は「安っぽい」と言われていたし、私自身、大人になってああいう店を好むのは、似合わないとか痛いとか、幼いんじゃないかと考えた時期もあったけど・・・。

やっぱり、かわいいものはかわいいなと思う。

TPOは考えつつも、好きな服を着て、好きな小物を持ち歩き、好きなものを部屋に沢山飾りたい。

夫の趣味に合わせずに、自分の好きを取り入れる。

まだ、完全には振り切れないところもあるけれど・・・、この感覚は、敦也との離婚を経験し、得たものの一つだと思う。
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