彩度beige
「そうなんだ。まあ、自由にしてもらえたら」

「・・・・・・」

不思議だな。

一葉くんといるのは本当にとても心地いい。

考えてみれば、一葉くんと会うのはまだ二度目だし、男の人と2人きりで車に乗るなんて、すごく久しぶりすぎることなのに。

一葉くんはキラキラしてるしイケメンだから、緊張しないわけではないけれど・・・。

なぜだろう。とても心地いい。

「・・・、疲れてない?長時間になったから」

「うん、それが全然疲れていないんだ。一葉くんこそ、聞くばっかりで疲れたでしょう」

「いや、全然。楽しかった。水谷さんのこと色々聞けて」

サラッと言われた言葉だけれど、私の胸はドキリとなった。

「楽しかった」って、とても嬉しくなる言葉。

「あ、でも・・・、聞きたいこと聞いてくれたかな。元夫との結婚生活についてを聞かれると思ってたんだけど、それこそ私の話ばかりだったから」

物語を書くために、「主人公の私」を理解するために、まずは・・・と、キャラづくりのために「私」についてを掘り下げたのかもしれないけれど。

敦也とのことはほとんど聞かないで、一葉くんに思うような収穫があっただろうか。

「聞きたいことしか聞いてない。それでもまだ足りないけど・・・、それは水谷さんの話であって、結婚生活については別に聞こうと思ってないよ」

「えっ、そうなの?」

「うん。興味ないっていうとそれもまた違うけど。昔の旦那さんとのことは、あんまり聞きたい話じゃないし」


(・・・そうなの・・・?)


私は小説なんて書かないし、一葉くんの思考はわからない。

だけど・・・と、素人頭で考える。

「一葉くんは、『元セレブ妻の転落からの逆転人生』的な感じの物語を書いてくれるんだよね?そうすると、結婚生活のエピソードって、結構重要なことなんじゃ」

尋ねると、一葉くんは一瞬キョトンとなった顔をした。

そして、思い出したように「ああ・・・」と言って苦笑する。

「言葉によって印象変わるな。確かに・・・、そんな感じのニュアンスの話になるとは思うけど。過去のことには軽く触れるくらいで、それこそ想像で埋めるくらいにしようかなって思ってたんだ。でも、そうだな・・・。確かに、今の水谷さんをつくった歴史には違いないわけで、もっと踏み込むべきなのか・・・」

ぶつぶつと、一葉くんはひとり言のように呟いた。

物語の構成を、色々と考えているのだろうか。
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