彩度beige
あれから、ちょくちょく真美とも一葉くんについての話をしている。

一葉くんと初めて会った日・・・本当に色々あった後、私は真美に急に帰ってしまった謝罪の連絡を入れ、真美は真美で、「敦也さんに何も言えなくてごめん・・・」というメッセージを送ってくれた。

私にとっても真美にとっても、敦也と美波さんがあの場に登場したことは、完全に予想外すぎる出来事で、なかなか衝撃的だった。

その後、電話で話そうかという流れになって、2人であの時の衝撃を語り合う。

「・・・いやー、ほんとに。普通、あそこで話しかけてくるかねえ」

「そうなの!!もう、ほんとそう!!」

あの時の敦也の言動に、ブーブー文句を言い合った。

しばらく話して落ち着くと、真美は「でもさ」と言って、少しだけ話題を変えた。

「衣緒がいなくなった後の展開も、結構びっくりだったのよ。私が衣緒を追いかけようとしたら、小説家の・・・一葉くんか、彼が『オレが行きます』とか言ってすぐにお店を出ていって」

真美はもちろん、みんなポカンとしたそうだ。

だって、一葉くんは私と話してなかったし、そもそも彼は、そういうキャラには全く見えなかったから。


(『探しました』って追いかけてきてくれた時、私もびっくりしたもんね・・・)


何かの間違いじゃないかって、ハニートラップなんじゃないかって、そんな不安を感じたことを思い出す。

「それで、一葉くんとはちゃんと会えたの?」

「うん。色々話して・・・、私が主人公の物語を書いてもらう話になって」

「・・・は!?」

ざっくりと結末だけを伝えると、電話越し、真美はとても驚いていた。

説明を端折りすぎてしまったので、そりゃそうだよね・・・と、そこから事の経緯を説明すると、真美は「なるほどねえ」と相槌を打つ。

「そっか、彼は小説家として衣緒に興味があったのか。でも・・・、それって平気なの?小説が完成した後に、制作費、とかいって、高額請求されたりしない?」

「え?・・・ああ、うん。それは大丈夫だと思う」

言われてみたら、そういう心配は私は一切していなかった。

ハッピーエンドになるまでが、グロテスクな話だったらいやだなあ、と、そんな心配はしていたけれど。

「うーん・・・、まあ、松澤さんと仲良いみたいだし、変な人ではないと思うんだけど・・・。でもまあ、ほどほどに警戒してよ。傍から見たら、わりとびっくりな展開だしね。松澤さんにも一葉くんのこと詳しく聞いてみるけれど・・・、なんかあったらちゃんと相談してよね」

「うん・・・、わかった。ありがとう」

という話をし、その日の電話はそこで終わった。






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