彩度beige
「はい。これ、どうぞ」

「あっ・・・、ありがとう・・・」

「Lynx」の外へと出ると、一葉くんはネックレスとぬいぐるみの入った紙袋を私に渡してくれた。

袋の口から、赤いリボンがチラリと見える。

嬉しい気持ちと恥ずかしさと、申し訳ないような・・・、だけどやっぱり嬉しさが一番大きくて、いろんな気持ちで胸がいっぱいだった。

「・・・大事にするね」

「うん。ネックレスは、次に会う時に着けてきてもらえたら」

「あ、う、うん・・・!」


(次に会う時って・・・、なんか、デートの約束みたいなんだけど・・・)


しかも、贈ってもらったネックレスを着けていく約束をするだとか。

こういうの・・・、一葉くんは慣れているのかな。

「・・・あの」

「ん?」

「か、一葉くんは、取材相手にいつもこういうことをしているの?その・・・、一緒にこうして出掛けたり、プレゼントを渡したり・・・」

どうしても、気になって聞いてしまった。

誰にでもしていることならば、一葉くんにとっては当たり前なのだと思うから、必要以上に意識しないようにしなければ。

「・・・いや。今まで一度もしたことないかな」

「え」

「前にも言ったけど、基本的に人と話すのは得意じゃないから。取材も・・・、させてもらう時は、会社とか、サークルの集まりみたいな場所に行かせてもらって、一方的に観察して帰ることがほとんどで。どうしても聞きたいことがある時は、話しかけて聞かせてもらうんだけど・・・、一対一で取材って、そういえば、今まで一度もないかもしれない」

一葉くんの回答に、驚いて、そして同時に、私は胸がドキリとなった。

だって、今の状況は、全く違うものだから。


(・・・そうなんだ。でも、だったらどうして・・・)


私とは、なぜ一対一で・・・2人きりで取材をしているの?

しかも、今日だけじゃなく。

沢山のことを私に聞いて、好きなものまで贈ってくれて・・・。

疑問。そして、わずかに胸の音が鳴る。

戸惑いながら一葉くんのことを見上げると、彼は、はっとしたような顔をして、そして、視線を逸らしてポツリと言った。

「水谷さんは話しやすいし・・・・・・、特別だから」


(・・・特別・・・?)


彼が言ったその言葉の意味を、聞き返し、すぐに確認できたらよかったんだと思う。

だけど、「特別」、と、そう表現されたことで私は頭の中がいっぱいで、それ以上、何も聞くことができなかったのだった。







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