彩度beige
それから、お昼ご飯を食べに向かった。

一葉くんと2人なら・・・と、どのお店にしようか昨日さんざん悩んだ挙句、東通りの先にある、自然派の定食屋さんに行こうと決めた。


(内装がかわいいし、美味しいし・・・、なにより、身体にいいことした感が嬉しいんだよね)


ビルの3階にあるお店。

エレベーターがないので階段を昇るのが大変だけど、それを越えてしまったら、あとはお腹も心も満たされる、心地いい世界が待っている。

「いらっしゃいませー。お二人さまですか?」

「はい」

「では、こちらにどうぞー」

ドアを開け、店内に入るとすぐに店員さんが席へ案内してくれた。

店の奥、窓際の大きな丸テーブルの4人掛け。

渡されたメニューをじっくり眺めて悩んだ結果、「今日のランチ」を2人で注文。

焼き魚がメイン料理になっていて、野菜を使った小鉢がいろいろ付くセット。

食後には、コーヒーもついてくる。

「・・・雰囲気いいね、ここ」

「そうなの。料理もすごくおいしいんだよ」

何気ない会話をしながら、私はとても緊張していた。

さっきの会話・・・、「特別」だと言われたことが、どうしても頭から離れない。


(でも、『特別ってどういう意味?』なんて、今更さすがに聞けないし・・・)


学生時代だったなら、もしかしたら・・・冗談交じりに聞くことができたかもしれない。

だけど今の私には、そんなことを聞ける若さや勇気はまるでなかった。


(・・・さっき、勢いで聞いてしまえばよかったかな・・・)


聞いたところで、『自分から物語を書くって提案した相手だから』とか、そういう答えが返ってくる気がするけれど。

一葉くんは、どういう意味で「特別」って私に言ったんだろう。

ーーー知りたい。

だけど今、聞ける勇気は私にはやはりなさそうだった。





それから、料理がテーブルへと運ばれてきて、早速、「今日のランチ」を2人で食べた。

焼いた魚のいい匂い。

小鉢もとてもおいしそう。

たわいもない会話をしながら、「これおいしい」「これもうまい」と言いながら食べる時間は楽しかった。

「・・・おなかいっぱい。結構ボリュームあったね」

「うん。おいしかった」

食後のコーヒーが運ばれてきて、飲みながら、2人でちょっと腹休め。

ぽかぽかと、窓から差し込む光が心地いい。

春だなあ、と、心の中で呟いた。


(・・・あ)


何気なく、一葉くんに視線を向けると、銀色の髪が光に当たってキラキラしていた。

・・・綺麗だな。銀髪って、こういうふうに光るんだ。

その感想を、私は素直に口にする。
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