彩度beige
どうしよう。ここは受け取るべきかもしれない。

受け取らないと、一葉くんは気持ちが収まらないとは思う。

だけどやっぱり、いろんな感情がわいてきて、それを良しとはできない自分もいるからーーー・・・。


(・・・!、それなら)


こんなこと、一葉くんを困らせてしまうだけかもしれない。

だけど今の私には、これしか思い浮かばなかった。

「・・・じゃあ、今日のその報酬分で、次は一葉くんの好きな場所に連れて行ってもらう・・・、なんてダメかな」

「・・・え?」

「っ、あっ、あの、えっと・・・、私のことは今までたくさん話したけれど、一葉くんのことは、私はあんまり知らないなって思ってて。だから・・・、どんな人が私の物語を書いてくれるのか、もっと知っておきたい気持ちもあって・・・」

「・・・」


(う・・・、ちょっと無理やりだったかも・・・!)


私が言ったお願いに、一葉くんはしばらく考えるような顔をした。
 
「好きな場所に連れて行ってほしい」だなんて、図々しいお願いだったかも。

それに、今日はずっと一緒にいたのに、好きになった人なのに・・・、「どんな人が書いてくれるのか」なんて、言い方も失礼だった気がするし・・・。

もっと考えてから言うべきだった・・・と後悔していると、「わかった」という彼の声が耳に届いて、私は、うつむきかけていた視線を上げた。

「確かに。よく知らない男に取材されて物語をつくられるとか・・・、考えてみたら怖いよな」

神妙な面持ちで呟く一葉くん。

私は、違う、そうではないんだけれど・・・と、本心を伝えたい気持ちになったけど、「一葉くんのことを好きになったから色々知りたい」なんてことはもちろん言えなくて。

私は、やきもきしながら・・・ドキドキしながら、彼の続きの言葉を待った。

「・・・水谷さん、長時間歩くの平気?」

「え?・・・うん。まあ、今日も結構歩いたし・・・、体力もそこそこある方だから、わりと大丈夫だよ」

「そっか。じゃあ・・・、一緒に行きたいとこがある」

「!」

どうやら、私の願いは聞き入れてもらえたようだった。

「一緒に行きたい」って、嬉しい言葉も添えられて。









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