彩度beige
ハイキングなんて久しぶり。

低い山とはいえど、これを登山というのなら、私は約10年ぶりに、山に登っているかもしれない。

当たり前のことだけど、同じ距離でも、街を歩くのとは訳が違った。

緩やかでも傾斜があるし、しばらく歩いていると、それなりに息が上がってきた。

体力はそれなりに自信があったんだけど・・・、普段の運動不足を感じてしまう。

「・・・大丈夫?」

「うん・・・、なんとか・・・」

精一杯の私に比べて、一葉くんは、余裕そうな表情だった。

ぱっと見細い感じだし、歩くのが好きというだけで、運動はしない方だと思っていたけど・・・、実は鍛えているのかな。

「あともう少しで頂上の広場に出るけど、疲れてるなら、一度そこのベンチで休もうか」

「ううん。もう少しなら・・・、がんばる」

よしっ!と気合いを入れ直し、私は足を前へと踏み出した。

そこから5分ほど歩いたところで、視界が急に開けていった。

「わあ・・・!」

広く、明るい場所だった。

展望スポットのような場所へと行くと、周りの景色が見渡せて、本当にとても気持ちいい。

「すごい・・・!気持ちいいね!!」

振り向いて、後ろにいる一葉くんに声をかけると、彼は眩しそうに「うん」と小さく頷いた。

優しくて、温かさを感じるような眼差しで。

私の胸が、ドキンと大きく音を出す。

「じゃあ、そこら辺で休憩しようか」

「あ・・・、う、うん!」


(・・・ダメだ・・・。すぐにドキドキしてしまう・・・)


一葉くんに、あんな眼差しを向けられてしまったら。

ああいう眼は・・・、ああいう表情は、一葉くんは誰にでも向けるものなのだろうか。

ーーー以前、私のことを「特別だ」って言ってくれた記憶が蘇る。

その意味を、できることならちゃんと聞きたい。








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