彩度beige
「ベースはクマでしょ」

「ううん、あれは絶対猫だと思う!」

言い合って、お互い顔を見合わせて、可笑しくなって2人で笑った。

ーーー猫でもクマでも、どっちでもいいか。

私たちは、もう一度一緒に空を見上げた。

「・・・そうだ。一葉くん、小説家以外の仕事って何をしているの?」

山の上。

多分、青空の下の広場で気持ちがよくて。

私は、とても自然に彼に尋ねた。

ずっと知りたかったこと。

この穏やかな空間が、私を素直にさせたのだと思う。

「ああ・・・、そっか、言ってなかったな。『Vulpecula(ブルペキュラ)』っていうホテルの社長兼支配人みたいなことをやってます。・・・って言っても、助けてもらうばっかりの、親の七光り的な立場の肩書きだから、偉そうなことは言えないんだけど・・・」

「!?」


(『Vulpecula』の社長!?そして、支配人・・・!?)


泊まったことはないけれど、敦也と結婚していた当時、ホテル内のレストランに食事に行ったことがある。

知る人ぞ知る、憧れの超高級ホテル。

訪れた時、想像以上に素敵なホテルだったから、いつかは泊まってみたいと思ったものだ。


(そこのホテルの社長であって、支配人もしているなんて・・・)


信じられないような事柄に、私は瞳を瞬いた。

驚きすぎて、うまく言葉が出てこない。

一葉くんはほんの少しだけ微笑むと、「Vulpecula」の社長兼支配人になったいきさつを話してくれた。












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