彩度beige
「・・・それはなんとなくわかるけど。この歳で好きな子に中二病っぽいって思われるのはさすがにちょっと・・・」

「・・・・・・」

「・・・!!あ、いや・・・っ!!」


(・・・えっ!?!?)


一葉くん、今「好きな子」って言っていた?????

それは・・・、流れからいって私のことを言っている??

聞き間違い?

だ、だけど・・・。

混乱状態で一葉くんを見つめると、一葉くんは、私よりさらに混乱しているようだった。

真っ赤な顔を、右手の甲で隠してる。

「・・・、違くて。その・・・、今、水谷さんを主人公にしてるから、物語上で好きになってる感じというか」

「え、あ・・・、物語上・・・?」

「・・・そう。その・・・、こう、作家として、登場人物に入れ込む感じで」

「登場人物・・・」

「・・・だから・・・、作家としての習性で。・・・できれば・・・、聞き流してもらいたい・・・っ」


(・・・聞き流す・・・)


それは、とても悲しいお願いだった。

だって、私にとってはもう一度、言ってほしいくらいのことだから。

だけど、「聞き流してほしい」と彼に言われて、やだ、なんて、子どもみたいなことはもちろん言えない。

「そ・・・、そっか!うん・・・、わかった。作家さんって、書いているとそういう感情になるものなんだね」

「・・・っ、・・・・・・」


(・・・そうだよね・・・)


一瞬でも、一葉くんが私を好きなんじゃないかと思ってしまった。

だけど、そうじゃないよって、聞き流してほしいと告げられた。

考えてみれば、一葉くんみたいな人が、私を好きになる理由なんてないじゃない。

以前言われた「水谷さんは特別」も、きっとーーー・・・、物語の登場人物として、主人公として、一葉くんが創る想像上の世界の中で、特別に想ってくれているだけだ。













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