彩度beige
夕暮れ前に下山して、私たちは電車に乗った。

隣同士、2人で座る。

疲れているけど心地いい。

今日一日、いろんな感情が湧いたけど、今はずいぶん穏やかだ。


一葉くんを好きなこと。

一緒にいる時間がとても楽しかったこと。

一葉くんは、私のことは「登場人物」「主人公」として好きであり、それこそ「特別」だなって感じたこと・・・。


もちろん、がっかりしないわけではないし、今だって、複雑な気持ちもあるけれど。

それでもーーー・・・、今、こうして一緒にいるだけで、幸せで、穏やかな気持ちに包まれている。

これは、山に行って、自然の力的なものでパワーチャージされたおかげかな?

わからないけど、今はとにかく、ただ、この時間を大切にできたらいいなと思った。

「・・・あっ、待ってー!!」


(ん?)


どこからか、慌てたような子どもの声が聞こえてきた。

そして、パタパタとこちらに近づく足音とともに、私の足元に、小さな青い鳥のぬいぐるみが転がってきた。


(あ、これって・・・)


ひょい、と、私はぬいぐるみを手に取った。

そして、それを落として転がしてしまったのであろう、近づいてきた男の子に手渡した。

「はい」

「あいがと!!」

ぱっとぬいぐるみを受け取ると、男の子は両親であろう人たちのところへ戻っていった。

「電車の中で走っちゃだめでしょ!!」「危ないだろー」と怒られながら。

「今のぬいぐるみ・・・、さっき私たちが見た鳥だよね?」

見覚えのある青い鳥。

私は、一葉くんに確認のように問いかけた。

「多分。模様とかそっくりだったし。見覚えがある気はしてたけど・・・、この辺では有名な鳥だったのかな」

「そうかもしれない」

「ちょっと調べてみよう」と言って、私たちはスマホで青い鳥を調査した。

すると、この辺りにのみ生息する鳥だということが判明し、最近では、「幸せの青い鳥」と銘打って、町おこし的な感じで色々とグッズ制作がされているようだった。

「かわいい。ぬいぐるみ以外にも、カバンとかTシャツとか・・・。あっ、お皿まである」

「ほんとだ。経済効果ありそうだな」

まさに、町にとって「幸せの青い鳥」かもしれない。

グッズの種類やデザインも色々あるようだから、好きな感じのものを選べそう。
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