彩度beige
(うわあ・・・、やっぱりここは別格だ・・・)


約3年ぶりに訪れた「Vulpecula」。

白色の大きなホテルを見上げると、見惚れるように息をはく。

緊張しながらエントランスへと向かっていくと、ベルボーイに声をかけられて、用件を告げるとすぐにフロントに案内されて、フロントの女性が「こちらで少々お待ちください」と、ラウンジのソファに案内してくれた。

スタッフの誰もが丁寧で、感じがよくて気持ちいい。


(内装も・・・、ほんとに素敵)


派手な印象はないけれど、品のいい豪華さで、上質さを感じる空間だ。

この空間にいるだけで、「自分は特別な存在だ」って、自然に思えてくるような、そんな世界にいる気分。

緊張感もあるのだけれど、同時に「ここは安心できる場所」って、そんな思いもわいてくるからとても不思議だ。

しばらくすると、先ほどのフロントの女性が再び声をかけにきて、フロアを移動し、打ち合わせ場所となる会議室まで私を案内してくれた。

「・・・申し訳ありません。現在、担当の者が手を離せないようでして・・・、こちらでもう少々お待ちいただけますか」

「はい。わかりました。ありがとうございました」

案内してくれた女性は丁寧にお辞儀をすると、会議室から出ていった。

私は、すっきりとした、広い空間に一人になって、ひとまずふうっと深呼吸。


(・・・緊張する・・・。担当の方、どんな人たちなんだろう。話しやすい人だといいな・・・)


ドキドキと、担当者の到着を待つ。

・・・と、しばらくすると、ドアをノックをする音がした。

「失礼します」

落ち着いた女性の声がして、キイッと、静かにドアが開かれた。

見ると、黒いパンツスーツを着た30代半ばくらいの女性が私に向かって会釈した。

「お待たせして申し訳ありません。水谷様ですね」

「っ、はい」

「本日はご足労いただきありがとうございます。今回、企画を担当させていただきます瀧澤夏保(たきざわなつほ)と申します。どうぞよろしくお願いいたします」

丁寧なお辞儀をすると、パンツスーツの女性・・・瀧澤さんは、私の元へと歩み寄り、名刺をサッと差し出した。

私も慌てて、用意していた名刺を渡す。


(・・・綺麗な人・・・)


久しぶりの名刺交換に緊張しながら、瀧澤さんに見惚れてしまった。

凛とした雰囲気の、意志の強そうな美人顔。

モデルのような長身で、黒いパンツスーツが良く似合う。

顎のラインで真っ直ぐに切り揃えられた黒髪も、美しさを際立たせていた。


(・・・仕事もすごくできそうな・・・)


バリバリのキャリアウーマン、という雰囲気を醸し出している。

素人の私が来たことをどう思っているだろう・・・と、ドキドキ緊張していると、瀧澤さんがニコリと笑った。
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