彩度beige
(・・・及河さん・・・、『紳士』っていう言葉が似合う雰囲気の男性だな。『執事』って言葉も似合いそう・・・)


一葉くんはもちろんのこと、瀧澤さんも及河さんも、仕事ができる素敵な大人、という雰囲気だった。

私は、久しぶりのスーツ姿も馴染んでいない気がするし、自分だけ、とても小さな存在のように感じてしまう。

緊張とアウェイ感で落ち着かない気持ちでいると、一葉くんが、私に向かって微笑んだ。

「・・・水谷さん。緊張しないで大丈夫。こっちからお願いして来てもらってるんだし・・・、この2人は、オレがすごく信用している人たちだから。緊張しないで平気だよ」

「うん・・・、あっ、す、すみません!はいっ」

落ち着かないまま返事をすると、瀧澤さんがふふっと笑った。

「まあ、慣れない場所で緊張しないでっていうのも難しいとは思いますけどね。徐々に慣れていただけたらと」

「そうですね」

瀧澤さんの言葉に続き、及河さんが頷いた。

緊張しすぎてしまうのも、気を遣わせてしまいそうだった。

私は「はい」と頷いて、気持ちを落ち着かせるように、小さく深く呼吸した。

「では、席にお座りいただいて・・・」

と、瀧澤さんが言ったところで、及河さんの携帯が着信を知らせたようだった。

「失礼」と断りを入れて電話に出ると、一言二言会話をし、「わかりました」と言って、すぐにその通話を切った。

「支配人。会長がお呼びです」

及河さんの声かけに、一葉くんはピクッと眉を持ち上げた。

「急ぎですか」と、確認のように問いかける。

「そのようですね。午前中の話の続きのようですし・・・。すぐに、とおっしゃってましたから」

「・・・わかりました」

はあ、と小さく息をはいた後、一葉くんは私に目を向けた。

そして、申し訳なさそうな顔で言う。

「ごめん、急用で席外すけど・・・、なるべく早く戻ってくるから」

「っ、はい」

「じゃあ、しばらくここをお願いします」と、及河さんと瀧澤さんに伝えると、一葉くんはすぐに会議室を出ようと踵を返す。

・・・と、瀧澤さんが、何かに気づいたかのように、「あっ」と言って、一葉くんに駆け寄った。
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